「ひみこのはがいーぜ」という言葉を知っていますか?
これは、噛むことの大切さを伝えるために「日本そしゃく学会」がつくった標語です。
ひ・・・肥満防止(ゆっくり噛むと早くおなかがいっぱいになって,食べ過ぎを防ぎます)
み・・・味覚の発達(よく噛むと味がよくわかる ようになります)
こ・・・言葉の発達(よく噛むと あごを動かすと筋肉が発達し,話し方もはきはきして分かりやすくなる)
の・・・脳の発達(噛む刺激を,脳の神経に伝え,発達を促す)
は・・・歯の病気予防(かむことで唾液が促され、唾液の抗菌作用や自浄作用が促される)
が・・・がん予防(唾液の免疫作用でがん予防になる)
い・・・胃腸が快調(よく噛んで唾液が促され、消化吸収が助けられる)
ぜ・・・全力投球(噛み締める力を育てることにより集中力を養うことができる)
このように、よく噛んで食べることは、健康の源。伸び盛りの子供たちのアゴや歯の発達のためにも大切ですね。
今は食中毒の季節ですが、別な視点からの噛むことの効用を指摘した「食中毒の予防は噛むことから」という記事がありましたので紹介します。
昭和21年、敗戦後の中国での話。
当時,上海から故国日本へ帰るための船が出ていた。
中国全土から兵隊たちは、飢えと戦いながらも上海にたどり着いた。
しかしそこには,兵隊を収容する建物もなく、屋外でテント生活を余儀なくされていた。
おまけに衛生状態も悪く、便所は穴を掘って板で囲っただけのもの。
水道は,揚子江の水をそのまま吸い上げた消毒不完全なものであった。
伝染病を媒介するハエや蚊,ノミ,シラミの類も年中いる。
しかも上海は、コレラの多発地帯であったと言う。
食料不足で抵抗力のない状況では,ひとたびコレラが発生すればたいへんなことになる。
二次感染のため,人々はパニックとなり壊滅的な打撃を受けるに違いない。
復員船が止まれば、二度と故郷の土を踏めないかもしれない。
ある日、2000人の部隊がたどり着いた。
うち一人がコレラで死亡したことがわかった。
全員の検便をしたところ,コレラの感染者が24人もいた。
これでは数日のうちにたいへんなことになる。
ただちに緊急対策会議が開かれた。
しかし敗戦直後の時期,物資は困窮し何ら案は浮かばなかった。
そこである軍医が,最後の手段を提案した。
それは単純な内容である。
「食事中は,一切水分を口にしない」ただそれだけであった。
唯一残されたコレラの予防法は、胃液による殺菌しかない。
誰もが,故国に帰りたい一心でそれを守ったのだ。
おかげで一人の二次感染者も出さなかった。
(「かかる軍人ありき」伊藤桂一著(光人社刊)より)
そもそも食中毒の菌は、食物を通じて口から入る。
ところが胃で分泌される胃酸は、pH1〜2の強酸だ。
コップ一杯のコレラ菌に胃液を一滴落とせば,瞬時に菌は死滅すると言う。
食物に付着する菌は,胃では生きておれないのだ。
ところが何かの理由で菌は,小腸に達し増殖して食中毒を起こす。
その理由の一つとして考えられること,それは食事時に水分を多量にとることだ。
水分のために胃液が薄まり,殺菌されない可能性がある。
O−157の事件の時,同じものを食べて食中毒を起こした児童と起こさなかった児童がいる。
この差は何だろう?
先日小学校で,子ども達と一緒に給食を食べた。
驚くような食べ方をしていた。
パンを細かくちぎって,ス−プにつけて食べる。
牛乳で流し込みながら食べる。
先に牛乳を飲む児は,まず噛んで食べていない。
水分の流し込み食べが、現代の食文化の一つとなっているのだ。
その様な児童の口の中を診るとむし歯も多い。
なるほど,噛めない歯も流し込みの原因となるのだ。
よく噛んで食べること。
それは食物の表面積を増加させ,胃液に触れ易い環境を作る。
そう言えばO-157の最初の発症例は,ハンバーグで感染したとのこと。
このような軟らかい食べ物であっても,噛むことが重要なのだ。
食中毒の予防は,よく噛むことと深く関係することがわかる。
(岡山大学歯学部付属病院 岡崎好秀氏ブログより)
噛むことの効用に「ひみこのはがいーぜ」に加えて、「食中毒の予防」が入りそうですね。
健康の維持・増進、そして病気の予防のためにも、流込みの食事は控えて、良く噛んで食べましょう。