指しゃぶりやおしゃぶりしていませんか
子どものなかには、お気に入りのぬいぐるみがないと眠れなかったり、いつまでも決まった毛布の端切れを握っていなければ気がすまない子がいます。それが、その子の精神安定剤になっているのでしょう。指しゃぶりも、そういう癖のひとつです。指しゃぶりは、子どもにとっては一種の精神安定行為で、いちがいに悪いと決めつけることはできません。しかしいつまでも指しゃぶりをしているようだと、歯並びにも大きな影響が出てきます。
指しゃぶりで多いのは、親指の腹を上あごに押しつけて吸う癖です。下あごの骨は手足の骨と同じように、硬いしっかりとした骨でできています。ところが上あごは、比較的軟らかい骨でできています。そして上あごは、下あごに引っ張られる形で成長します。そういう軟らかい骨でできている上あごに、指を押しつけて強く吸うわけですから、上あごはだんだん変形してきます。本来はU字型に発達するはずなのに、指に引っ張られてV字型にとんがったり、上の前歯が前に出てくることがあります。そして下あごは後ろに押しつけられます。そこで出っ歯や開咬の原因になるのです。
それではいつ頃までにこの癖をやめさせたらいいのでしょうか。
最近アメリカで指しゃぶりやおしゃぶりとあごの形の関係ついて大がかりで長期的な調査が行われました。その結果は、二歳以降も指しゃぶりやおしゃぶりを続けていた子どもに大きな影響が見られたというものでした。特におしゃぶりの継続的使用は指しゃぶりよりもあごの形やかみ合わせにさらに大きな影響があったというものでした。これまでのアメリカの歯科医師会の見解では、四、五歳までの指しゃぶりやおしゃぶりはかみ合わせやあごの形に影響しないというものでしたから、この調査結果は学会にも衝撃を与えました。
日本でも若いおかあさん方が精神安定や鼻呼吸を促すためにお子さんにカラフルでファッショナブルなおしゃぶりをさせているのを見かけることが多くなりました。これもいちがいに悪いとはいえませんが、かみ合わせやあごの形に悪い影響を与えないためには、指しゃぶりとともに二歳までには卒業させたいものです。