先日、弘前市で矯正治療をより深く学ぼうとする歯科医師の集まりである、弘前矯正研究会で話をさせていただきました。
タイトルは『歯科矯正治療のトレンドと保健学的早期介入の必要性』
内容は、医院レベルでできる(抜歯/非抜歯)矯正後の3次元モデル・バーチャル・シミュレーション。ループなどを必要としないNi-Ti 系の超弾性や形状記憶ワーヤー。トルク・アンギュレーション・インアウトなどブラケットの正確な位置決めが可能なインダイレクト・ボンディング。ワイヤーとの間に摩擦抵抗の少ないセルフ・ライゲーション・ブラケット。痛みなどに応じて自分で抜歯空隙の閉鎖スピードをコントロールできる装置(HYCON device(TM)。患者さんの積極的な協力を必要としない、いわゆる ” Non-compliance appliance “ や矯正固定用のインプラントなど。これらの装置は使用が比較的容易で術者側の管理も易しく、しかも臨床の質を落とさない、あるいは向上させるものです。
一方、最近の日本人小児には歯が大きめで顎骨が華奢なことによる叢生や下顎枝が短く下顎角の開大している上顎前突が増えてきています。これらは主に発達期の呼吸機能の発達不全や噛む機能の低下によりもたらされると考えられていますが、このようなタイプの不正咬合はどのような装置を用いても治療が難しく、また矯正後の咬合の安定も得られにくいものです。またこれらの顎態は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を惹起する有力な要因になるとの指摘あります。
講演の前半では矯正治療のトレンドや新しい装置、古典的装置の適用基準や使用法を、後半では顎骨や咬合の健全発達のための保健学的対応とOSASに対する歯科的アプローチについて話をさせていただきました。
今回の講演が少しでも弘前矯正研究会の先生方のお役に立ち、ひいては患者さんに恩恵をもたらすとすれば、講師としてこれに優る喜びはありません。