UCLA(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)歯学部のオーラルバイオロジー科の研究により、甘草(かんぞう:リコリス)から得られる特定のハーブエキスが虫歯の原因を引き起こすバクテリアの働きを3〜6か月減少させることが科学的に立証され、甘草の薬効が歯科界でも注目されはじめています。
この甘草は、国内で販売される漢方薬の約7割の品種に欠かせない生薬ですが、最大の産出国である中国が、甘草を貴重な資源として輸出を規制しており、このままでは、中国が生産量で世界のほとんどを占めるレアアース(希土類)のように、十分な量の輸入が難しくなる懸念が広がっていました。
そのような中『<漢方薬>甘草 津波で浸水の農地で試験栽培 順調に育つ』の朗報記事(毎日新聞 2011年11月5日)がありましたのでご紹介いたします。
東日本大震災の津波で浸水し、作付けができなくなった宮城県内の農地で、漢方生薬・甘草の試験栽培が順調に進んでいる。甘味料や化粧品などにも利用される甘草は、全量を中国からの輸入に頼っており、国内での栽培方法の確立が課題。海水の塩分が残った土壌が生育に適しているとみられ、試験栽培を実施しているNPO法人は被災者の協力を得て栽培規模を拡大し、将来的には塩害に負けない新たな特産品として商業生産を目指す。
乾燥させた根を漢方生薬として使用する甘草は、国内消費量が年1267トン(08年度)。漢方薬全体の7割で使用されている。
漢方生薬に詳しい元大阪薬科大教授の草野源次郎さんが理事長を務めるNPO法人が7月下旬、海水が1週間以上浸水して耕作できなくなった同県岩沼市内の畑に約300株の苗を植えた。10月中旬には、ほぼすべての苗に葉が100枚以上付き、生薬に使う地下茎も60センチ以上伸びた。一方、この畑から約8キロ離れ津波被害がなかった場所に植えた苗は、葉が最大30枚程度しか付かず、茎や根も細かった。
草野さんによると、甘草は乾燥や日照りなど厳しい自然環境下ほどよく育ち、根に薬効成分を蓄えるという。NPO法人は土壌の高い塩分濃度が甘草に良いストレスを与えた可能性があるとみて、来秋の収穫まで詳しい生育状況を調べ、商業生産が可能かどうか判断する。畑を貸した近くの農業、原田善吾さん夫妻は「(塩害で)しばらく何も栽培できないと思っていただけに希望がわく」と話す。草野さんは「津波の塩害で苦しむ宮城が、全国有数の甘草生産地になるかもしれない」と期待している。
(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111105-00000035-mai-soci)
写真:津波につかった原田さんの農地で育つ甘草の苗・宮城県岩沼市にて